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Book

戦争と平和2

絵で読む 広島の原爆

那須正幹/文 西村繁男/絵

福音館書店 1995年

 

3歳のときに爆心地から3キロ離れた自宅で被ばくした作家が、多くの被ばく生存者の証言をもとに書いた文章に、1年近く広島に住んで取材した画家が、渾身の力を込めて細密に、当時の現場を再現した絵を中心に据えた科学絵本の力作です。

最初に第二次世界大戦が勃発した世界情勢を紹介し、原爆が投下された日の広島の暮らしが俯瞰されます。そのあとに、核を開発したマンハッタン計画と原爆の仕組みを克明に解説。原爆を投下したエノラ・ゲイ号の乗組員も目がくらむ閃光が広島上空を走り、建物も人間も粉々になって飛び散る、悲惨極まりない地獄絵図が、大判横長の場面いっぱいに描かれていきます。熱線、爆風、放射能の恐怖と、次世代にまで影響を残した被爆の恐ろしさを丁寧に解説し、原水爆禁止運動から反核運動の歴史までたどってみせる大判の絵本で、海外でも翻訳出版されています。(野上 暁)

第五福竜丸事件が報じられた翌月の4月20日に執筆され、5月2日に新聞に掲載されたと、いぬいは絵本の後書きに記しています。

水爆実験後の海の中を舞台に、魚たちを擬人化した童話を、津田櫓冬が巧みな技法を駆使して絵本化。エンボス調の用紙を使い、リアルな素描画風の墨線で描かれた魚たちの上に、特色の青磁色と青鼠色を版画風にベタで重ねていき、それが海の中の静謐さと放射能を浴びた魚たちの動揺を見事に表現して効果的。青海原の彼方で水爆が炸裂し、その光が波間を横一線に幾筋も照らし出します。この場面だけに単色ベタで使われているローズピンクが、鮮烈な印象を与えます。

南の海の珊瑚の林の中で、放射能に汚染されて死んでいく魚たちのドラマが哀切に表現され、核実験に対する怒りを静かに訴えかける作品です。(野上 暁)

トビウオのぼうやは びょうきです

いぬいとみこ/1982

 

本書は、ビキニで被ばくして亡くなった久保山愛吉を主人公にして、ベン・シャーンが描いた「Lucky Dragon Series」の連作を中心に、詩人のアーサー・ビナードが構成して文章を付けた絵本。

モノクロの版画の要所要所にカラーを挟み、第五福竜丸が焼津港を出港し、乗組員はビキニで死の灰を浴びて毛髪が抜け、半年後に無線長の久保山が放射能病で亡くなるまでを描きます。放射能は人の体のあらゆる部分に入り込んで蝕むだけではなく、海を汚し、雲を汚し、雨と一緒に地上に降り注ぎ、あらゆる自然を破壊する。それでも原水爆をいつか使おうとする人たちがいます。核への警鐘であるとともに、原子力発電の危険性をも予感させる絵本です。(野上 暁)

ここが家だ 

ベン・シャーンの第五福竜丸

ベン・シャーン/絵

アーサー・ビナード/構成

集英社 1996年

 

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