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戦争と平和

戦争と平和5

ネルソンさん、

あなたは人を殺しましたか?

アレン・ネルソン/著

講談社 2003年

 

海兵隊員としてベトナム戦争の前線で戦い、帰還後重いPTSD(心的外傷後ストレス障害)で苦しんでいたアレン・ネルソンは、高校時代の友人の勧めで小学生に自分の戦争体験を語ることになります。語り終え、何か質問は? という先生の問いに一人の少女がたずねました。「ミスター・ネルソン、あなたは人を殺しましたか?」とっさに、彼は何も言うことができません。目をつぶり、悩みます。「イエス」と答えてしまったら、子どもたちは自分を残虐な殺人者としてこわがるだろう、イエスというべきかノーというべきか……。長い沈黙の後、彼は絞り出すようにして答えます。「イエス」と。その時、怖くて目をあけられない彼の体にふれるものがありました。見ると質問をした少女が小さな手で彼を抱きしめ、目に一杯涙をためながら言ったのです。「かわいそうなミスター・ネルソン」……はじめてネルソン氏の講演をきいたとき、私はこの場面で流れる涙を抑えることができませんでした。その後何度講演を聴いても、またこの本を読んでも、同じ個所で同じように泣いてしまいます。 本書にはネルソン氏がベトナムの洞窟の中でベトナム人少女の出産の瞬間に遭遇し、赤ん坊をわが手で受けとめるという衝撃的なエピソードも紹介されていますが、これらはいずれも私に「生命」、とか「母と子」とか「子ども」の視点から世界をもう一度見直す必要性があるのでは、と強く考えさせるものでした。 沖縄での海兵隊の訓練の実態、ベトナムでの戦争の実情、などなど数多くのことが語られていますが、ネルソンさんの思いはこの一言に尽きるでしょう……「ほんとうの戦争は無慈悲で残虐で愚かで、そして無意味です」彼は2009年61歳で亡くなりました。多発性骨髄腫、米軍がベトナムで使った枯葉剤の後遺症だと聞いています。(大竹永介)

本の情報を徐々に増やしていきます。

しばらくお待ちください。

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