【リレートーク子どもたちの現在と未来に向けて第2回】コロナ禍の五輪開催中に発せられた5人の熱いメッセージ!
6月の前川喜平さんの講演会「子どもたちが危ない! 日本の教育はどこへ向かっているのか」を受けて企画された連続オンラインリレートーク「子どもたちの現在と未来に向けて」の第2回目は7月31日14時から開催されました。7月17日の第1回と同じく実行委員の野上暁の司会進行によってスタートしたリレートークのトップバッターはご自身お2人のお子さんを持つ作家の工藤純子さんです。(写真は上段左から野上、さくま、工藤、下段左から濱野、佐藤、ひろかわの各氏)
お子さんの五輪観戦が中止になりかわりにテレビで見た感想文が夏休みの宿題となったことに疑問を持ったという経験から話を始められました。校長に質問をしたところ、五輪観戦は6年前から教育課程に入っていてその集大成、今までいろいろやってきたから今さらやめられないという答えだったと紹介し、それは開催を強行したのと同じ理屈。どうせ宿題を出すなら、開催の是非を考えさせた方がよかった、と語られました。
「考える」ことを教えないこうした教育では世界においていいかれるのでは、と疑問を呈され「学校は社会の縮図」といわれたのが印象的でした。
2番目の発言者はイタリアから参加された作家の佐藤まどかさん。イタリア教育の特長 として少人数(23~27人)であること、インクルーシブ教育(必ずクラスにハンディキャッパーがいる)のため多様性、違うものへの違和感がなく偏見が少ないこと、口頭試問が多いため丸暗記ではダメであること、また高校まで無料であることなどを紹介されました。ご自身として大事なポイントと思っているのは①疑問を持つこと②考えること③意見をいうことの3つだとのことです。
3番手は今回のスピーカーの中でただお一人の画家であるひろかわさえこさん。最近不安に思うこととして、感性豊かな子ほど社会とぶつかってしまうことが多い、しなやかな強さをどうしたら身につけられるか? という問題をあげられました。戦前と同じような空気にも怖さを感じる、とも。
ひろかわさんは作品作りだけでなく大事なことがあるだろうとの思いから「子どもの本9条の会」の活動も続けられていて、地味だけど持続していくことの大切さを訴えられました。
続いてはフォーラムの実行委員でもある作家の濱野京子さん。今日は話したいことがいっぱいあると、テロ特措法、有事法制、教育基本法の改悪など、小泉内閣以来の政権の動きについてふれ、また、私たちは負け続けている、として、マスメディアのありかたや記者会見の問題、コロナ禍で露呈された行政の事務能力の劣化などなど、絶望したくなる状況について早口ながら熱っぽく語られました。
何より許しがたいのは「言葉」の問題だとして、政治家の噓をあげ、子どもたちに政治家の姿を見せられるか? と厳しく問いかけ、政治的な発言をすることの是非についても、我々は作家の前に人間であり発信力を持つものとしての責任があるという中村文則氏の言葉を引きながら、絶望したくなる状況だが絶望しているわけではない、私たちには子どもたちへの責任があると力強く結ばれました。
ラストバッターは翻訳家のさくまゆみこさんです。まずアスリートより開催者のメンツ、命より金儲け、と五輪開催への怒りを述べられた後、ご自分のロンドン体験から、自分の意見をいえるようになるためには本を読んで感想をいうことが大切であること、教育やメディアがダメでも子どもの本にできることがある、それは多様な価値観を示すことだといわれました。そして、多様性ということについて、日本の作家が書けないことも書いている外国の作家がいるとし「翻訳家があける窓」という言葉で結ばれました。
その後、5分間の休憩があって5人によるフリートーク。同感した、なんとかしなくてはと確信を持てた、との声が多く上がりました。
参加者の中からも「子どもの本に関わっている者の責任を感じた。本にできることについて考えていきたい」(評論家西山利佳さん)「子どもの本が新しい価値観を見せていくべき」(作家みおちづるさん)「国語教科書から文学を独立させることが必要」(作家ひこ・田中さん)という意見がだされ、若干の質疑応答があって16時終了。まさしく五輪真っ最中の開催だっただけにするどく熱い意見が交わされた2時間でした。
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